1. ITU国際電気通信連合が定める「1:3:1:3:7」の黄金比率
モールス信号のすべての音と休符(無音部分)は、最短の単位「短点1つ分の長さ(1 Unit)」を基準として厳密に定義されています。
短点を「1」としたとき、長点は正確にその「3倍」の長さを持ちます。また、音と音の間の「無音の時間」にも等しく重要な比率ルールが存在します。
2. 通信速度の基準「PARIS標準」とWPM(Words Per Minute)
モールス通信の速度は「WPM(Words Per Minute:1分間に送出する語数)」で測定されます。しかし、英単語は文字数がまちまちです。そこで世界標準として採用されたのが「PARIS」という基準単語です。
P(・--・)、A(・-)、R(・-・)、I(・・)、S(・・・)に語間スペースを加えると、合計ちょうど「50単位」になります。つまり、1分間にPARISを20回打てる速度が「20 WPM」となります。
速度換算の公式(WPM と 日本の分速字数 CPM)
1 WPM = 分速 5 文字(CPM)。例えば、アマチュア無線で一般的な「20 WPM」は分速 100 文字(CPM)、1短点の長さは「60ミリ秒(0.06秒)」に相当します。
3. なぜ「600Hz〜800Hz」の音が選ばれるのか?音響の秘密
映画やアニメ、無線機で聞くモールス信号は、独特の澄んだ「ピー」という高いピッチ(音の高さ)を持っています。当サイトのツールでも約700Hzの正弦波を採用しています。
なぜこの高さの音が選ばれるのでしょうか?そこには人間の聴覚特性と無線電波の物理的制約という2つの明確な理由があります。
① 人間の耳の感度ピーク(等ラウドネス曲線)
人間の聴覚は500Hz〜2000Hz付近の音に対して最も感度が高く、微弱なエネルギーでもハッキリと知覚できます。低すぎる音(100Hz)は聞き取りにくく、高すぎる音(4000Hz以上)は耳への疲労が極端に大きくなります。
② 無線ノイズの狭帯域フィルター通過性
電波の混信や空電ノイズが多い短波帯(HF)において、700Hz付近の純音(正弦波)は帯域幅を数十Hz〜数百Hzまで狭く絞り込んでも信号が潰れず、ノイズの底から浮き上がって明瞭に届きます。
4. 正しいリズムを身体で体感してみよう
知識として比率を理解したら、次は指先でそのリズムを奏でてみましょう。当サイトの電鍵シミュレーターでは、キーボードやタッチで本物の打鍵感覚を体験できます。
モールス信号の音とリズムに関するよくある質問
Q.長点が短点の3倍より長かったり短かったりするとどうなりますか?
熟練の通信士は多少の比率の崩れでも脳内で補正して解読できますが、長点が短すぎると(例:2倍)短点と混同し、長すぎると文字の切れ目と誤認しやすくなります。正しい1:3を維持することが聞きやすい打鍵の秘訣です。
Q.WPMとは何の略ですか?初心者はどれくらいの速度を目指すべきですか?
Words Per Minute(1分あたりの語数)の略です。初心者はまず5〜10 WPM(分速25〜50文字)から始め、実用的なアマチュア無線交信レベルである15〜20 WPM(分速75〜100文字)を目標にするのが標準的です。
Q.モールス信号の音は「サイン波(正弦波)」でないといけないのですか?
矩形波やノコギリ波でも音としては鳴りますが、高調波(倍音)が多く含まれるため耳が非常に疲れやすく、無線送信すると隣接周波数にノイズ(スプリアス)を撒き散らしてしまいます。そのため純粋な正弦波が世界中で推奨されています。
Web電鍵でリズムを鳴らしてみる
ブラウザ上でスペースキーやタップを使って、実際の1:3リズムでモールス音をリアルタイム演奏できます。